『りんごは赤じゃない―正しいプライドの育て方』を読みました。
指導力に高い評価のある中学校の美術教師の方のルポタージュです。
彼女の授業に対する取り組みが紹介されていますが、本書のテーマは「世界や人との向き合い方」です。
タイトルとなっている「りんごは赤じゃない」というのは、我々はりんごの絵を描くときは赤一色で塗りつぶします。
しかし、実際のりんごを見ると下のほうが黄緑色になっています。
それでも、固定観念から無造作に赤一色にしてしまいます。
そのような固定観念を捨て、きちんと物を見ることで表現力は増します。
このような見方は大人でもなかなか出来ません。
むしろ、大人の方が固定観念に囚われてしまっています。
現実をありのままに見て受け入れると言うのは簡単ですが、実行は難しいです。
人と向き合うときには、真摯に対応します。
この方は、常に教室を整え、自身の身なりもきちんとして授業に臨みます。
生徒をしっかりと見て、小さなことでも良いことをすれば褒め、
教室が騒がしい場合などは率直に自分の気持ちを伝えて注意します。
取り組むテーマは与えますが、細かな指示まではしません。
その結果、生徒に自主性や責任感が芽生えてきます。
本気で人と向き合うには、大変なエネルギーを要します。
そして、その熱は相手に伝わります。
信頼関係を築くテクニックは色々とありますが、まずは真摯に向き合うことではないでしょうか。
人として、やらなければならないことに改めて気付かされた一冊でした。