経営コラム


なぜ、立派な「クレド」ほど、社員の引き出しの中で眠ってしまうのか?

「カードにして配ったのに、誰ひとり唱和すらしていない」
「言葉は綺麗だが、日々の現場判断にまったく活かされていない……」

従業員が100人を超え、「社長の背中を見て育つ」段階から「仕組みで組織を動かす」フェーズへ移行する経営者様から、最も多くいただくご相談です。

実は、クレドが形骸化するのは、社員のモチベーションや理解力の問題ではありません。
心理学でいう「解釈の抽象性(抽象的な言葉は、具体的な行動に翻訳されない)」と「正の強化(望ましい行動への報酬)の不足」が原因です。

理念を飾り物から「日々の行動指針」へ昇華させる、3つの心理学的アプローチをお伝えします。

■クレドを日常の行動に落とし込む「3つの組織心理アプローチ」
1.「認知的再フレーム」:抽象的な理念を「具体的な行動動詞」に翻訳する
「お客様第一」や「挑戦を楽しむ」といった言葉は、人によって解釈がブレます。
「お客様第一とは、具体的になにをすることか?」を部署ごとに議論させ、「問い合わせには2時間以内に第一報を入れる」「失敗しても挑戦したデータを出せば褒められる」といった『目に見える行動(行動動詞)』にまでブレイクダウン(再定義)してください。
自分たちで言葉を噛み砕くプロセス(参画効果)が、当事者意識を生みます。

2.「ピア・プロセッシング(ピアボーナス)」による承認欲求の満たし
人間は上司から評価されるだけでなく、同僚から「クレドを実践しているね」と認められた時に最も強く行動が定着します(正の強化)。
クレドに沿った行動をした仲間に対して、少額のインセンティブや感謝メッセージを贈り合う「ピアボーナス」や「今週のクレド・ヒーロー投票」を導入します。クレド実践が「称賛される文化」を作ることが、行動の自発性を引き出します。

3.「手続的公正」と「評価制度(MBO/OKR)」への完全連動
どれだけ理念を叫んでも、人事評価や昇進が「売上数値のみ」であれば、脳は「クレドはポーズに過ぎない」と学習します(認知の不協和)。
1on1や人事評価の項目に「今期、どのクレドをどう体現したか?」というプロセス評価を組み込んでください。
経営陣がクレドに沿った行動を公正に評価・抜擢することで、「理念に従うことが、自分のキャリア利益になる」という確信が生まれます。
これは、正しい行為を評価するだけでなく、間違った行為を正すことも含まれます。
クレドに反する行為をしてもお咎めがないのであれば、誰もわざわざ守ろうとしません。
毅然とした評価が、経営者の本気度を示します。

クレドとは、単なる「道徳的な言葉集」ではありません。
それは、社長が現場に不在であっても、100人の社員が「迷った時に同じ判断を下せるようにするための意思決定フレームワーク」です。

額縁の中の理念を、組織を強くする「生きている行動規範」へ書き換えなければなりません。

(本日の質問)
あなたの会社では、クレドがお題目になってしまっていませんか?

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